「ある自殺者の手記」より 著者:秋田滋
た。封筒の上には大きな文字で太く私の名が書かれてある。それを見ていると私の双の眼に泪《なみだ》が一ぱい
涌《わ》いて来た。その手紙は私のいちばん親しかった青年時代の友から来たものだった。彼は私が大いに期待を....
「死」より 著者:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ
やうな心持がして、気が落ち付いて快くなつた。 併し間もなくまた憎悪、憤怒《ふんど》、絶望がむらむらと
涌《わ》き上がつて来る。 「えゝ。馬鹿な事だ。誰がそんな事を信ずるものか。己も信じはしない。信ぜられな....
「即興詩人」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
を下すごとに、先づ探りて而る後に踏めり。既にして一の隆起したる處に逢ふ。その状《さま》新に此熔巖の海に
涌出せる孤島の如し。されど其草木は只だ丈低き灌木の疎《まばら》に生ぜるを見るのみ。この處に山人《やまび....